2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古橋秀行『ある日、爆弾がおちてきて』(電撃文庫)

あたしたちは二種類の時間を生きている。自分で感じる自分の時間と、ほかの人が感じてる(と自分が感じてる)他人の時間の二種類を。自分の時間と他人の時間は、一緒になることも多いのだけれど、きっとでも、一緒にならないことのほうがずっと多い、気がす…

三崎亜記「バスジャック」(『バスジャック』集英社より)

バスジャックにはルールがあるみたい。そしてそのルールにのっとって行われたバスジャックにはロマンがあるみたい。三崎亜記さんは、考えてみればデビュー作『となり町戦争』からずーっと、「かたち」や「きまり」といったものと、その「なかみ」について取…

高橋優子『薄緑色幻想』(思潮社)

散文詩集。この本でわたしたちは、物語がはじまる前の、甘い蜜のようなどろどろしたものにみたされた無音の世界を手さぐりで進んでゆくことを強いられる。淡いけれども、色彩は豊かだ。匂いもある。秘密めいた記憶の底に、優しく、ゆるやかに降下していくか…

本多孝好「眠りのための暖かな場所」(『FINE DAYS』所収)

「爬虫類がどうして卵を温めないか、お前、知ってるか?」本多さんの小説はいくつも読んだけれど、少なくともあたしが読んだかぎりでは、全部一人称の視点で語られている。たいていは男性が語り手で、たまには女性も語る。ここでちょっと脱線めいた話を。語…