浅海

『サマータイムマシン・ブルース』

タイム・マシンにはいろんな種類がある。大雑把に分けるとしたら、時を変えることができるものと、変えることができないものの二つ。ここではめんどくさいから、未来のことはおいておく。それじゃあ、過去へ行ってみようと実際に過去へ行ってしまうと、存在…

古橋秀行『ある日、爆弾がおちてきて』(電撃文庫)

あたしたちは二種類の時間を生きている。自分で感じる自分の時間と、ほかの人が感じてる(と自分が感じてる)他人の時間の二種類を。自分の時間と他人の時間は、一緒になることも多いのだけれど、きっとでも、一緒にならないことのほうがずっと多い、気がす…

三崎亜記「バスジャック」(『バスジャック』集英社より)

バスジャックにはルールがあるみたい。そしてそのルールにのっとって行われたバスジャックにはロマンがあるみたい。三崎亜記さんは、考えてみればデビュー作『となり町戦争』からずーっと、「かたち」や「きまり」といったものと、その「なかみ」について取…

本多孝好「眠りのための暖かな場所」(『FINE DAYS』所収)

「爬虫類がどうして卵を温めないか、お前、知ってるか?」本多さんの小説はいくつも読んだけれど、少なくともあたしが読んだかぎりでは、全部一人称の視点で語られている。たいていは男性が語り手で、たまには女性も語る。ここでちょっと脱線めいた話を。語…

よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』(新書館)1〜4巻(完結)

本当のことというのは、ナイフのように人を傷つける。いつもそうだというわけじゃないけど、でもやっぱり実際には傷つけることが多いと思う。だから十分慎重に、振り回す(振りかざす?)そのやりかたに気をつけなきゃいけだめ。犬には犬の豚には豚の、そし…

村上龍『希望の国のエクソダス』

希望の国へエクソダスするのかと思ったら、どうやらそうでもないみたい。日本人作家でもっともノーベル賞に近いといわれる村上春樹とはすでにトラック3週半ぐらいの差がつけられているような気がする村上〈ドラゴン〉龍先生の『希望の国のエクソダス』は、世…

米澤穂信『さよなら妖精』(創元推理文庫)

米澤穂信さんの代表作『さよなら妖精』は、創元推理文庫で買える。ラノベにはちょっと距離を感じるけど、ミステリ仕立ての青春小説を読んでみたいという人にはうってつけ、と言われていたのであたしも手を伸ばしてみた。この物語は一応、ミステリなんだと思…

西川魯介『屈折リーベ』

あたしはメガネをかけていないからか、メガネっ娘にはちょっと憧れていたりする。でも最近のメガネ・ブームはちょっとどころかかなり間違ってると思う。美男美女がメガネをかけただけじゃん、と誰かが突っ込んでいたのを思い出す。メガネをかけた人を好きに…

森見登美彦『太陽の塔』

ああ、恋だなあ。あたしがあなたを好きになると考えてみよう。そんなことは万に一つも起こらないなんて、即座に否定しないで。だいたい即座に否定しちゃったら、あたしに失礼でしょ。で、あたしはあなたを好きになる。あなたの何が好きだとか、どうやって好…