森博嗣『すべてがFになる』

森博嗣の小説の処女作です。ジャンルとしてはミステリーで、あらすじは以下のような感じです。
大学の夏休みのゼミ合宿で、とある孤島にキャンプに行くことになったN大学助教犀川創平と女子大生西之園萌絵。しかし、その孤島にあったハイテク研究所で2人は殺人事件に巻き込まれてしまう。殺されたのは天才プログラマ真賀田四季。しかも尋常の殺され方ではない。彼女は両手両足を切断され、ウェディングドレス姿でワゴン型ロボットに乗って犀川と萌絵の前に現れたのだ。しかも状況から考えて完全な密室殺人。犯人が犯したミスは圧倒的に少ないと見られる状況で、犀川と萌絵の推理が始まる。
この作品はこの一作で完結ではなく、このあともシリーズで続いていきます。今のところ刊行予定のものも含めて全10冊という大容量になっています。ミステリ作家というものは基本的に誰でも自分オリジナルの名探偵を作り出すものですが、このシリーズでも犀川創平という名探偵が活躍するわけです。
さてその名探偵ですが、名探偵としては異色の肩書きを持っているといって良いでしょう。N大学工学部助教授という、僕のような人間にとっては完全に「あっち」側の人間です。要するに理系の人間ということですが、本作品自体も理系小説という位置付けになっています。こういうことを書いてしまうと敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、難しい公式が書いてあったりはしません。解説の瀬名秀明も書いていますが、理系というのはあくまでも名探偵とその助手(萌絵)が理系の人間であるから、彼らの事件へのアプローチの仕方が理系的思考に依存しており、そのような視点から事件を解決していくわけです。ですからトリックや犯人の絞込みなどに小難しい要素が入ることはなく、小説内でも説明がなされているので誰でも楽しめる内容になっていると思います。
しかし、作品内にはロボットやハイテクコンピュータが多数登場するので多少SF的な要素も含んでいます。ですからミステリーとSFが両方好きな人は楽しめると思います。ちなみに僕はホラーが好きです。
                                       (文学部3年 妹)