イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』(河出文庫)

イアン・ワトスン「絶壁に暮らす人々」、ラリー・ニーヴン「リングワールド」、筒井康隆「平行世界」、星新一「おーい でてこーい」、ボルヘス「バベルの図書館」、山尾悠子「遠近法」、諸星大二郎「塔に飛ぶ鳥」……。「特殊構造世界もの」というジャンルを想定してみたとき、この小説もまちがいなくそのような系譜に位置を占める。マルコ・ポーロが自身の訪れた五十五のありえざる都市についてフビライ汗に語るという形式は読者の想像力をさまざまなベクトルに翻弄し、知的なほら話という点では〈Qfwfq〉シリーズと同質の面白さといえるだろう。東方の雰囲気を緻密に演出している文章にも感嘆させられた。(文学部2年、綿矢りさ夫)


見えない都市
見えない都市
posted with amazlet on 07.02.05
イタロ カルヴィーノ Italo Calvino 米川 良夫
河出書房新社
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